GROWモデルは、目標達成を支援するコーチングのフレームワークです。
GROWモデルとは?
GROWモデルとは下記の4つの要素で成り立っています。
- G:Goal(目標の設定)
- R:Reality(現状の把握)/Resource(資源の確認)
- O:Options(選択肢の創出)
- W:Will(意志の確認)
コーチングでは、コーチがクライアントの話を聞きながら、適切な質問を通してそれぞれの内容を引き出し、目標達成に向けて必要な行動の選択肢を具体化&行動計画に落とし込むサポートをしていきます。その際にGROWモデルは役立つフレームワークです。
GROWモデルの実践方法
⑴ 目標を決める(Goal)
具体的な目標を定めます。問題解決であれば、どんな問題を解決して「どのような状態」にすることが目標なのか?目標実現であれば「何を実現させたいのか?」を設定します。
ポイントは、自分の影響の範囲内にある目標にすること。目標には2種類あり、自分の行動によって達成できるもの(プロセス目標)と、自分の行動以外の影響が関わって達成できるもの(最終目標)に分けることができます。
コーチングでは「最終目標」と「プロセス目標」の両方を設定することが重要になります。「プロセス目標」だけ立てても「最終目標」が分かっていなければ大きな方向性を見誤る可能性があるからです。最終目標は未来のビジョン。プロセス目標は期限付きの具体的な行動目標とも言い換えることができます。なお目標設定にはさまざまな方法があります。
⑵ 現実を確認する(Reality)
変化を引き起こすには、まず出発地点を知る必要があります。そのために現在の状況を書き出します。
ポイントは、現実をより客観的に、より具体的に表現できるようにすることです。現象と解釈を切り分け「現象に基づいて、どれだけ的確に把握できるか」によって目標達成度が変わるからです。独自の解釈・希望・願望・恐怖・感情的解釈・希望的観測・批判などにとらわれることなく、現状を知る必要があります。自分がいる場所を、知る必要があります。そのためコーチのサポートがあることがいっそう効果的になります。
⑶ 資源を確認する(Resource)
現在、自分が持っている資源(リソース)を書き出します。
資源(リソース)とは人・お金・時間・知識・スキル・能力・モノが挙げられます。
⑷ 目標と現実のギャップを確認する
目標と現状の間にあるギャップが明確になります。そのギャップを書き出します。
⑸ 選択肢を洗い出す(Options)
問題解決や目標達成に大切なのは、選択肢の多さです。現状と目標のギャップを埋めるために考えられるあらゆる選択肢・方法を書き出します。
ポイントは、あらゆる制限や実現可能性については考えずに、ブレイン・ストーミングの要領で、自由な発想で1つでも多くの選択肢・アイディアを見つけ出すことです。
選択肢が出てこないケース⑴
そもそものインプット情報がない場合は選択肢が出てきません。その場合はまず知識、体験などのインプット量、つまりは行動量を増やしましょう。
選択肢が出てこないケース⑵
否定的な思い込みを持っていると、情報は持っているのに選択肢として挙げることができない/したくないという困難が立ちはだかります。その場合は、自身の価値観・信念に向き合う必要があります。具体的には「自身の可能性について、制限的な思い込みがないかどうか?」「すべき/すべきじゃないと物事を一般化しすぎていないか?」「現象を歪曲して独自の解釈をしたままになっていることがないか?」そもそものところを見直し、その枠を広げる必要があります。これは一人では気づきにくいためコーチングサポートが役立ちます。
⑹ 意志を確認する(Will)
本当にそれはやる価値があると思えるか?やる気があるか?やる意志があるかを確認します。
100%YES!であれば…
期日、スケジュール、やる順番を決めていきます。
もしもそれが100%でなければ…
そもそもの目標設定にズレがないか?立ち返って考え直しましょう。いくら「やるべき」と思っていても「やりたい」と思えないことに私たちは力を注ぐことができません。ここでも価値観・信念・思い込みによって「やりたいと思い込んでいる」ことがないか?「できないと思い込んでいる」ことがないか?などの見直しと確認が有効です。
⑺ 行動計画を立てる
取り組む意志が確認できたら、ギャップを埋めるための行動計画を決定します。
- 行動を決める:何をやりますか?
- スケジュールを決める:いつやりますか?
- 未来予測をする:どのような障害が起こる可能性がありますか?
- リソースを確認する:どのようなサポートが必要になりますか?
ミニコラム
GROWモデルのはじまり
GROWモデルは、書籍「はじめのコーチング」の中でコーチングの基礎として紹介されています。1980年代はじめに「インナーゲーム」というコーチングの始まりとなった理論をヨーロッパにもたらした1人であるグラハム・アレクサンダーによって最初に考え出されたと言われています。
自分のできることはやり切ること
友人が、受験の際に先生からこんなことを言われたそうです。「あなたができることは全てやる。ただ、最後は運も関係するんだよ。だからいくら頑張ったからと言ってすべてがうまく行くわけではないの。だけど、自分ができることはすべてやり切りなさい。」と。その通りだなと思いました。
プロセス目標を立て、やるべきことは淡々と行動していく。私たちができるのはそれだけとも言えますし、それに全力で取り組んでいくから次の扉が開くとも言えます。目標を達成するために必要な能力、行動、スキル、マインドセット…それらを身につけ磨いていくことは可能です。
行きたい学校があったら、まずはそこに受かるための戦略を考え、勉強をして学力を上げる。対策をとる。準備をする。やりたい仕事があったら、まずはその仕事に携われるように動いてみる、能力を磨く、経験を積む。分かっている地点まで進み続ける、やり続けることが必要です。
ビジョンはひらめき。実現可能性は行動の中。
あれやりたい!こんなアイディアが浮かんだ!というビジョンはひらめきから始まります。しかしそれがただの「夢」で終わるのか、現実になるかの違いは、それをプロセス目標に落とし込んで行動したかどうかです。