誰かに質問されたとき、「すぐに答えやすい質問」と、「なんだか答えにくい質問」がありませんか?
この違いは、あなたの能力や性格ではなく、“質問の抽象度”が合っているかどうかで感じ方の違いが生まれていることが多いです。
この記事では、クライアントさんとのやり取りから生まれた気づきをもとに「質問の階層」という考え方と、その扱い方をご紹介します。
まず知っておきたい─質問の「抽象度の階段」
質問の抽象度とは?
ここでご紹介する「質問の抽象度」とは「質問によって投げかけられるリサーチ範囲の広さ」 です。
- 大きく、長く、広い範囲について問われている → 質問の抽象度が高い
- 具体的で、短く、狭い範囲について問われている → 質問の抽象度が低い
という形で定義しています。
質問の階層は大きく3つ(高・中・低)
質問は、ざっくり分けると以下の3段階に分けることができます。
- 高い抽象度:未来・目的・価値観
- 中くらいの抽象度:変化・イメージ・現在地
- 低い抽象度:行動・条件・具体的ステップ
3つの階層は、図にするとこんなイメージです。

さらに、それぞれの階層には役割があります。
それぞれの階層の“意味”と“役割”を知っておく
3つの抽象度には、それぞれ役割があります。この役割を理解しておくと、「いまどの階層の質問が合うのか?」を自然に選べるようになります。
① 高い抽象度の質問(未来・目的・価値観)
- 意味:方向性をつくる問い
- 役割:迷ったときの“北極星”を思い出す
- 例:「どんな未来をつくりたいですか?」
② 中くらいの抽象度の質問(変化・イメージ・現状の言語化)
- 意味:今と未来をつなぐ問い
- 役割:状態を整理し、思考をほぐす
- 例:「何が変わり始めていますか?」
③ 低い抽象度(行動・条件・数値・具体的ステップ)
- 意味:実行に落とし込む問い
- 役割:“今日の一歩”を明確にする
- 例:「今日できる一歩はなんですか?」
まずは「質問には3つの階層がある」ということを知っておく。それを知っておくだけでも、なんだかうまく行かないな…と感じた時の助けになってくれるはずです。
思考が進む質問・止まる質問の違いは「階層のミスマッチ」
抽象度が合わないと、答えづらくなる仕組み
例えば…モヤモヤしている時に「それを解決するために、来週までに何をしたい?」と聞かれたら…少し答えづらいかもしれません。逆に、やることが明確で「よし、動いていくぞ!」という状態のときに「あなたが本当に大切にしたい価値観は?」と聞かれると、「今それ聞く?!」と感じることも、あるかもしれません。
どちらも、その人の状態と、質問の抽象度が合っていないときに起こる現象です。質問する側・される側どちらが悪いわけでもなく、ただ “階層のミスマッチ” が起きているだけ。たったこれだけで、思考や気持ちが進んだり止まったりするのです。それだけ「質問の力」ってものすごい威力なのです。
いまの状態によって“答えやすい質問”は変わる
- 混乱しているとき → 具体すぎる質問は負荷が高い
- 落ち着いているとき → 抽象度の高い質問は洞察が深まりやすい
- 行動段階 → 抽象度が高すぎると迷いが戻りやすい
質問は、その人の「今の状態」に寄り添うとスムーズに効果を発揮します。逆に、合わない抽象度の質問が来ると、行動や思考を停滞させてしまう力もあるのです。
モヤモヤが強いときに避けたい質問のタイプ
- 理由を深く掘る質問
- 行動をすぐ求める質問
- 抽象度のジャンプが大きい質問
これは“悪い質問”ではなく、状況とタイミングのミスマッチの問題です。
抽象 → 具体 → 抽象へ戻る。自然に整理される“循環”
最初から具体に行くと詰まりやすい理由
人は、未来の方向性や価値観があいまいなまま「どう行動するか?」だけを考えようとすると、思考が混乱したり、不安が膨らみやすくなります。
不安や焦りがあるときほど、早く答えが欲しくなったり、「とにかく動けば大丈夫」と思いたくなるもの。でも、最初から具体的な行動だけに意識を向けると、根本にある不安や悩みはそのまま残ってしまいます。
同じ悩みをぐるぐる繰り返す、焦りが消えない、モヤモヤが大きい。そんな状態のときは、無理に具体化しなくて大丈夫です。深呼吸をして、いったん抽象度を上げて、方向性を整えるステップが役に立ちます。
抽象度を行き来することで、ほぐしていく
思考や感情は、3つの抽象度の階層を、行き来しながら循環させることで、考えや気持ちが自然と整理されていきます。例えば
- 【高】抽象度(方向性・目的)
- 【中】抽象度(イメージ)
- 【低】抽象度・具体(具体的行動・数字)
- 【中】抽象度(現状)
- 【高】抽象度(意味づけ・納得)
このように “いろいろな階層を往復しながらミックスする” ことで、考えも、気持ちも、しなやかに動き出します。人には「どの抽象度で考えやすいか」という思考のクセがあるため、ひとりで考えていると、どうしても得意な階層に偏りやすくなるものです。そのためあえていろいろな階層の質問を投げて循環させることは、パーソナル・セッションでもとても大切にしているポイントです。
例:ゴール設定でよくある“階層の移動”
これからの将来について考えたいと思ったときは、質問の抽象度を行き来しながらイメージを深めていく必要があります。例えば、次のような流れがとても効果的です。
- どんな未来になっていたら “最高だな” と感じるだろう?(高抽象度)
=未来の方向性や、理想の姿に触れる問い - その未来につながることで、今日ひとつだけできることがあるとしたら?(低抽象度・具体)
=行動の入り口をつくる問い - その一歩は、自分が思い描く未来を実現するうえで、どんな意味がありそう?(中抽象度)
=行動と未来を結びつける問い
このように、抽象度を軽やかに行き来することで、イメージが湧き、行動が決まり、腑に落ちる流れが自然に生まれます。これこそが、自己理解が深まっていくプロセスです。
今日からできる「質問の扱い方」ミニTips
① 今の自分に合う階層から始める
未来が見えないとき → 抽象度を下げる
将来のことを考えるほど不安になるときは、いきなり大きな未来(3年後・5年後)を描こうとしない方がスムーズです。まずは「3ヶ月後の自分はどうなっていたら安心かな?」と短いスパンで “現在地に近い未来” を描いてみてください。抽象度を一段下げると、考えやすくなります。
行動が決まらないとき → 抽象度を上げる
「何をしたらいいか分からない」「焦る」そんな状態のときは、具体の手前で立ち止まっています。いったん視点を上げて「本当はどんな暮らしができたら心地いい?」と、大きめのイメージに触れてみるのがおすすめ。少しだけ抽象度を上げると、行動の方向性が見えやすくなります。
人には“考えやすい階層”の癖がある
未来について考えやすい、具体はすぐに浮かぶなど、抽象度にはそれぞれその人の思考のクセが現れます。クセが悪いわけではなく、自分がどの階層に偏りやすいかを知っておくと、質問の階層を調整しやすくなります。
② 答えづらいときは、質問を“1段上 or 下”にずらす
抽象すぎる → 少し具体へ
「もっと具体的にするとしたら?」「状況をひとつ例にすると?」
抽象度の階段を “一段だけ下ろす” と、スッと答えが出てきます。
具体すぎる → 少し抽象へ
「そもそも大事にしたい方向性は?」「その行動の先に、どうなりたい?」
具体で詰まっているときは、一段上に戻ると考えやすくなります。
一段ずらすだけで思考が動き出す
大きな変更は必要ありません。階層を1段だけ変えるだけで、しなやかな考えが出来るようになったり、心が柔らかく軽くなることで、物事は自然と動き出していきます。
③ 最後は「今日できる一歩」を見つけて終える
抽象度を行き来したあとは、必ず「今日できる小さな行動」 に落とし込んで終えるのがおすすめです。「何をする?」「どこで?」「いつ?」などの質問を通して、最後は具体的な行動を決めることで、「未来へのイメージ」が「実際に動き出すもの」に変わります。
未来を考えてみたり、モヤモヤと広がった視野を、小さな一歩に変換できれば十分です。その積み重ねが、確実に未来を動かします。
まとめ:今の自分に合った階層を選んでみる
もし今「考えがうまくまとまらないなぁ…」「なんだか思うように進まないな」そう感じるときだったら、“いまの自分ならどの階層が合いそうだろう?”と、問いかけてみてください。
はっきり分からなくても大丈夫。最初はただ「なんとなく」で選んでみるだけでもOKです。小さく試しながら、少しずつ掴んでいきましょう。未来を考えるときにも「どのくらいの期間でイメージするか?」という抽象度の選び方が役に立ちます。日常のいろいろな場面で、ぜひ使ってみてください。
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