変化モデルとは、私たちが変化を起こすとき「内部ではどのようなことが起こっているのか?」をシンプルにしたものです。「何をすると効果的に変化が起こせるのか?」を知るヒントになるモデルです。
名称 | 変化モデル |
意味 | 自分自身にどのように「変化」を起こしているのかをシンプルに表現したモデル |
英語 | Model for Change |
訳 | Model=モデル Change=変化 |
〈変化モデル〉とは?
私たちは、リラックスしている時と緊張している時では行動が変わります。また物事の捉え方が変わると、気持ちが変わり、身体の状態も変化します。その結果、表情が明るくなったり活動的になるかもしれません。何か1つ変えると、他に影響が及ぼされより大きな変化が生じます。
変化にも、学習にも、自己開発、問題解決、自己実現にも共通する「変えるべきこと」ことが3つあります。
- これまでと違うように「考える」
- これまでと違うように「感じる」ことを学ぶ
- これまでと違うように「行動する」
この3つの変化がお互い影響しあい、結果として変化・成長につながります。
〈変化モデル〉の概要
コミュニケーションの仕組み
〈コミュニケーションモデル〉という私たちが「どのようにコミュニケーションを取っているのか?」「どのような相互作用が起こっているか?」をシンプルに表現したモデルがあります。

変化の仕組み
コミュニケーションモデルをベースに、変化に影響を及ぼす3要素に焦点を当てたモデルが〈変化モデル〉です。
- 【a】思考(考え・内的表象)
- 【b】心(感じ方・状態)
- 【c】身体(行動)
の3つが相互に影響しあい変化を生み出します。

〈変化モデル〉の3要素
私たちが変化するとき、行動(身体)・状態(心)・内的表象(思考)の3つの要素が影響しあって「変化」が引き起こされます。

【a】内的表象(思考)とは
内的表象(思考)とは、心の中で作り出される体験のことを言います。心の中で作られる体験とは、今目の前にある出来事や体験ではなく「思い出していること(過去)」「考えていること(現在)」「想像していること(未来)」を指します。つまり私たちの「思考」です。私たちは「今現在起こっていること」ではないにも関わらず、その対象について思考することができます。この自分の内面だけで思考することを心理学の言葉で(内部で)表象するといいます。
考えていることや物事の捉え方は、現実そのものではありません。私たちそれぞれの世界観(信念や価値観、これまでの経験)を基に描かれた内的な世界です。内的地図とも言われます。
内的表象の役割は、シミュレーション
私たちの思考は、選択・決断・行動におけるとても大切な役割を果たしています。思考を巡らせているとき、私たちは心の中でイメージを描いたり、考えを展開させるためにつぶやいたり、脳内でしっくり感などの感覚を想像、確認したりします。これらは現実にあるわけではなく、心の中で行われています。考える、思考するとは私たちが頭の中で創り出した世界の中でシミュレーションをしているのです。
内的表象を変えるために必要なのは、行動と状態に働きかける
内的表象(思考)は「直接」触れて変えることができません。そのために必要なのが変化の3要素の他2つ行動(身体)と状態(心)です。
私たちが自身の考え方や、物事の捉え方を意図的に変化させようとするときに大切なのは、「よい状態」で、「行動をすること」です。ワクワクした状態で、これまでは苦手と思っていた事務処理の作業が「楽しい」と感じる経験ができるとどうでしょうか。これまで「事務処理は苦手だ」と捉えていたのが「事務処理は得意だ」と考えが変わる可能性があります。
内的表象(思考)の影響:結果を左右する
このシミュレーションは現実ではありませんが、良いイメージが浮かぶだけで気持ちが感覚が軽くなった経験はありませんか?これまで難しいと思っていたことが、シミュレーションの中でうまくいくと行動までの時間も驚くほど早くなったり。
逆に嫌なタスクを依頼されたことで、気持ちが沈んみ、さらには頭痛がしてくる。その結果、腰が重たくなって、なかなか動き出せなかったなんてことはありませんか?これは私たちの日常で経験する、思考(内的表象)が、気持ち(状態)や行動に影響を及ぼす場面です。
【b】状態(心)とは
〈状態〉とはある瞬間の精神的&身体的状況のこと。心理的状態、内的状態、感情状態とも言われます。
- 習慣的な思考(内的表象/どう考えているか)
- 肉体的フィーリング(生理作用/どう感じているか)
- 精神的フィーリング(感情/どんな気分・感情を抱いているか)
の総和です。幸せな状態、悲しい状態、意欲ある状態などの個人の内的な感情状態を意味します。状態には生理作用も含まれ、楽しいと体温が上がったり、不安だと呼吸が浅くなったりといった現象が見られます。この生理作用含めた身体&心の状態を内的状態と言います。
状態によって、行動や思考の結果が変わる
なんだか気分がいい時は身体も心も軽くって、ちょっとしたいいことに遭遇したりしませんか?いいことに遭遇した!と思って、ちょっといつもよりも+αの行動をしたらさらに感謝されたり。逆に焦っているときは考えもなかなかまとまらないし決断も時間がかかって、「いつもならこんなことはないのに!」ってところで電車を逃してさらに落ち込む…。
これは私たちの状態が、思考(内的表象)さらには行動に影響を及ぼすパターンでよく見られます。
【c】行動(身体)とは?
〈行動〉とは身体性をともなう具体的な活動&振る舞いのこと。
- 具体的なアクション/行動
- 非言語の行動(振る舞い・ボディランゲージ)
- 言語(話す、使う、書く言葉)
などが挙げられます。実際に私たちが意識して動く行動もありますが、無意識に表されている非言語の表情、仕草も含まれますし、話す・書く言葉も含まれます。
具体的な行動は、意識的に行なっていることが多いですが振る舞いは無意識に現れます。いくら言葉では「大丈夫!」と言っても表情が暗かったり、ため息をつきながら「大丈夫」と言われたら行動と、状態・考えに不一致があるのだなと周りは分かります。
行動は、何よりもパワフルな変化の要
「気持ちが先か行動が先か」なんて言われますが、どっちが先でも変化は起こせます。気持ちが乗らなくても、最初にまず1回取り組んでみると意外に楽しかったり、カンタンだったりすることから状態が変わり、考えが変わることはよくあります。反対に行動しないことでいつまで経っても、落ち込んだままの状態を維持させることになり、その結果どんどん悪い方に考えてしまうという経験もあるのではないでしょうか?これは私たちの行動が状態と思考(内的表象)に影響を及ぼすパターンでよく見られます。
〈変化モデル〉まとめ
私たちが「変化」と言っていることは、自分の外部と内面双方が影響を及ぼしあって生じたことの結果です。
私たちが何か1つを変えると、それは全体に影響を及ぼします。行動を1つ変えれば、心や思考に影響を与えます。思考を変えると、それは心や行動を変容させます。心・思考・身体は互いに影響し合っているのです。つまり1つが変わったから1つの結果が出るというものではありません。私たちの変化というのは、システミックなプロセスの結果生まれています。