学習の5ステップとは、私たちが学ぶときに経験する5つの段階のこと。学習モデルの1つ。
〈学習の5ステップ〉とは
- 無意識的な無能:知らないしできない
- 意識的な無能:知っているができない
- 意識的な有能:意識するとできる
- 無意識的な有能:意識しなくてもできる
- 意識的な無意識的有能:意識して、無意識にやっていることを教えることができる
この5つのステップを移動することによって、能力やスキルを身につけていきます。
名称 | 学習の5段階 学習の5ステップ 学習の5ステージ |
意味 | 学ぶときに経験する5つの段階のこと。学習モデルの1つ。 |
英語 | The 5 Stages of Learning |
訳 | 学びの5つのステージ |
〈学習の5ステップ〉概要
学習とは〈知らない状態〉から〈知っていて使える状態〉に移行するプロセスです。私たちはさまざまな方法で学びます。このモデルを知ることで、自分が今どの段階にいるのかを思い出し、行き詰まった時にはその対策を取るのに役立ちます。

〈学習の5ステップ〉歴史
1969年マーティンM.ブロードウェルという人物が記した「4つのレベルの教育/The Four Levels of Learning」という記事が始まりと言われています。1970年代アメリカの臨床心理士であったトマス・ゴードンのトレーニングに取り入れら、その後「学習レベル」「学習段階」モデルとして広まりました。近年になって第5段階(意識的な無意識的有能)が追加されたと言われています。(Stages for Learning/Competence,Learning Stage Model,Levels of Learning Ladder 等と呼ばれています。)
〈学習の5ステップ〉各ステップ概要
〈学習の5ステップ〉⑴ 無意識的な無能

〈学習の5ステップ〉⑴ 無意識的な無能とは
- 知らないことに気づいていない。
- 知らないしできない。
〈学習の5ステップ〉⑴ 無意識的な無能/起こる感情反応
- 学ぶ必要性についての不満や混乱
〈学習の5ステップ〉⑴ 無意識的な無能/次のステージに進む要件
自身が「知らない」ことに気づき「知りたい/知るべきだ」と思う必要があります。そのためには新しい能力は、自分にとってどのように価値があるかを明確にします。
〈学習の5ステップ〉⑴ 無意識的な無能/必要なサポート
コーチやトレーナー、教師となる存在がいることで
- なぜその学習が必要なのか、どのように価値があるか、理由を聞くことができる
- 自分自身の興味・関心と、新しい学習に対する意欲をどのように結びつけるか相談できる
といったサポートを得ることで、より学習効果が高まります。
〈学習の5ステップ〉⑵ 意識的な無能

〈学習の5ステップ〉⑵ 意識的な無能とは
- できなていことに気づいている
- 学ぶ必要があることを理解している
- 学びたいと思っている
- スキル習得のために練習を始めたがうまくはできない状態
〈学習の5ステップ〉⑵ 意識的な無能/起こる感情反応
○知ることに対する好奇心
×分かるのにできないことに対する葛藤
知らないことを理解して受け入れ、自分の力不足に気づいています。しかし「分かっているのにできない」「思うようにいかない」「間違える」「失敗が続く」などが起こるため、その部分についてフラストレーションを感じやすい段階。〈知った=すぐできるようになりたい〉という気持ちがその葛藤を加速させます。
また学習に取り掛かる方法&プロセスが分からないという悩みも抱えやすい段階です。
〈学習の5ステップ〉⑵ 意識的な無能/次のステージに進む要件
知らなかったことに気づき、学ぶ必要があることは理解していますが、行動に取り組む第一一歩は腰が重くなるものです。そのため学ぶ動機を明確にする必要があります。
また練習を始めたばかりのため、全くうまくできず間違いや失敗も頻発します。ただそれらが起こるのはこの段階において必要不可欠ですし、とても自然で当たり前のこと。そのため具体的な方法論を提示する教師(教える)の存在が助けになります。
〈学習の5ステップ〉⑵ 意識的な無能/必要なサポート
コーチやトレーナー、教師となる存在がいることで
- ガイドを受けながら練習を重ねる(効果的な実践)
- 具体的なフィードバックを得る(ポイントを絞った集中学習とモチベーション維持)
- 〈学び方〉自体の戦略を練る(自分にあった学習スタイル)
これらのサポートを得ることでより、フラストレーションの解消、具体的な学習プロセスの獲得、自分にカスタマイズされた学習戦略の明確化により、学習効果が高まります。
〈学習の5ステップ〉⑶ 意識的な有能

〈学習の5ステップ〉⑶ 意識的な有能とは
- 知るべきこと、身につけるべきスキルを認識し、取り組んでいる
- やろうと思えばできるけれど、集中&意識する必要がある
- 逆に言えば、意識しないとできていない
- 強い意識的な練習が必要で、意識的な努力を要する
- 十分な練習と経験が必要
〈学習の5ステップ〉⑶ 意識的な有能/起こる感情反応
○できることへの高揚感&希望
×意識が抜けるとできないことへの葛藤
意識を向けて集中することでできた時の高揚感や、結果が見え始めることに対する希望を抱き始めます。ただ意識が抜けると「できない」現実が繰り返されるので、その点で最もフラストレーションを感じやすいステージです。
できないことが目についたり「変わっていないのではないか」という不安も感じやすい時期です。しかしその認識は逆で「意識できている」証拠です。できないことに気づいていないとき( ⑴・⑵段階のとき)は変化が起こっていませんが、⑶段階は変化しつつあるときです。フラストレーションや不安は自然な感情なので安心して継続しましょう。
〈学習の5ステップ〉⑶ 意識的な有能/次のステージに進む要件
学習を継続し「習得する」という意志を持ち続ける必要があります。そのため習得したらどうなるか、結果やその先の希望・メリットを明確にします。
〈学習の5ステップ〉⑶ 意識的な有能/必要なサポート
コーチやトレーナー、教師となる存在がいることで
- 意識が抜けてしまっている時のフィードバックを得る(学習習得を早める)
- スキルを様々な状況でも活用できるようサポートを得る(応用力を身につける)
- モチベーションを保つためのメンタルサポートを得る(いい状態をキープする)
- より効果的な学習方法についての気づきを得る(効果的な学習)
メンタルスキルを含め、新しいスキルを身につけるための継続的学習のサポートを得ることができます。
〈学習の5ステップ〉⑷ 無意識的な有能

〈学習の5ステップ〉⑷ 無意識的な有能とは
- 重ねて学んできたことが融合され、1つの円滑な動き、能力にまとまる
- 意識せずとも、その力を発揮することができる
=他のことにも、自由に、同時に意識を向けることができる - 意識的な努力は不必要で、目標を定めると無意識に任せることで自然と運ばれていく
- 習慣化・自動化しているので驚くほどカンタンにやることができる
- できていること自体に気づかなくなる=できちゃってる!(暗黙知)
- ただ、なぜそれが起こるのかをまだ説明することはできない
〈学習の5ステップ〉⑷ 無意識的な有能/起こる感情反応
○疾走感や軽やかさ
×どのように行っているか説明できないことに対する不便さ、面倒くささといった葛藤
無意識でできるようになると、これまで〈学びのために使っていた意識〉を開放することができるため、身軽になったように感じます。最初に意識を向けるだけで、あとは無意識のうちに自然と進んでいくので疾走感やスピード感を感じることも多くなります。
ただ無意識でできるようになると(学習の中でもメンタルスキルは特に)出来ていることに気づけなくなります。また習慣になっているので、いつどのようにやっているかを説明することも困難になります。そのため、それを人に説明する・教えることや、理解されないことに対する不便さ、面倒くささのフラストレーションを抱えます。
〈学習の5ステップ〉⑷ 無意識的な有能/次のステージに進む要件
無意識にできるがどのように行っているかを「説明できない」状態。また説明することや教えることに対しての不便さや面倒くささ、フラストレーションを感じ始めた時がそのタイミングです。
「無意識でできるけれど、説明ができない」ことと「それを伝えたい/伝えるべきだ」と思う必要があります。そのために「伝えることには、どのような意味があるのか、価値があるのか」を明確にします。
〈学習の5ステップ〉⑷ 無意識的な有能/必要なサポート
コーチやトレーナー、教師となる存在がいることで
- 無意識でできるようになったこと、習得したことを理解する(自己変化の認識・強みの発見)
- 実現していることに気づく観察力&内省力を高める(観察力・内省力の強化)
といったサポートを得ることで、学習の成果が自身の能力・強み・魅力の一部となっていることを自覚することによって、自己理解と自己認識が高まります。
〈学習の5ステップ〉⑸ 意識的な無意識の有能

〈学習の5ステップ〉⑸ 意識的な無意識の有能とは
- 卓越した技術、削ぎ落とされムダのないように見られる動きで、外から見ると魔法のように見える
- いともたやすく、淀みなく行われているため能力の細かい部分は外からは見えない
- これまでの学習の段階を逆に遡り、学んだものを分解し、再構築して他者に教える段階
- 学習プロセスを振り返ることによって、経験の明確な段階に気づく
- 無意識的にやっていることを、意識的に説明し教えることができる
〈学習の5ステップ〉⑸ 意識的な無意識の有能/起こる感情反応
どの角度、どの方法でも伝える/教えることができる安定感
〈学習の5ステップ〉⑸ 意識的な無意識の有能/必要なサポート
メンターとなる存在がいることで
- 能力の分解&再構築をスピーディに行う(2者視点による効率化)
- 無意識的行動を、別視点から拾ってもらう(見えない能力の見える化)
といったサポートを得ることで、自身の卓越した能力を言語化・構造化することをスムーズに行うことが可能になります。
〈学習の5ステップ〉の例
自転車の乗り方を学ぶ

- 自転車の存在を知らない。(無意識的無能)
- 周りの友達が自転車に乗っているのを見て「乗りたい!」と思う。(意識的無能)
- 自転車を買ってもらって練習し始めたけど、1人ではまだ乗れない。(意識的有能)
- 友達とおしゃべりしながら自転車に乗れるように!(無意識的有能)
- 自転車に乗ったことのない子どもに「どのようにすると自転車に乗れるのか」教える(意識的な無意識的有能)
ロジカルシンキングを学ぶ

- 概念を知らない。(無意識的無能)
- 先輩に「ロジカルに考えてみな」と言われる。「こんな考え方あるんだ!」とワクワク。興味を持ったけど、どうやって身につけたらいいのか分からない…(意識的無能)
- 「ロジカルシンキング」に関する本を10冊購入。読破してミニワークに挑戦。でも実践の仕事で活かすにはどうしたらいいのかまだよくわからない…(意識的有能)
- 課題が出てきたら自然と思考が進み、ロジカルに考えられる。その結果「仕事の効率・質が上がったね」と上司からの評価も変わってきていた。(無意識的有能)
- 会社の勉強会でロジカルシンキングの勉強会を担当することに。人に教えることができるようになった。(意識的な無意識的有能)
自己理解の方法を学ぶ

- 自分のことを理解するのがどういうことが知らない。自己理解を深めると悩みが解決することに気づいていない。(無意識的無能)
- 「変えられない」と諦めていた自分の性質・性格も変えることができる部分があると知って興味を持つ。(意識的無能)
- 自己理解を深めるプログラムを見つけてスタート!座学やエクササイズに取り組む。ただ、今ある自分の課題や悩みには1人では応用ができないことも…(意識的有能)
- 課題や悩みがあっても、自分の特徴や特性を前提に自然と解決策や選択ができている。課題や悩みについて考える時間が短くなり、最終的には悩むこと自体がなくなった。(無意識的有能)
- 過去の自分と同じ悩みを持つ人の相談に乗り、どのように解決してきたかを伝えられるようになっていた。(意識的な無意識的有能)
〈学習の5ステップ〉の活用
〈学習の5ステップ〉と時間

あるスキルに熟達するには1万時間の練習が必要である、とする“1万時間の法則”(『天才!成功する人々の法則』マルコム・グラッドウェル)や、ある能力が「卓越性に届くまでには2.5万時間かかる」など諸説あります。
ここで大切なのは、能力の熟達には実践&経験は必須(つまりは時間が必要)ですが、膨大な練習量と時間が必須なわけではありません。「どのくらいの時間/練習量が必要か」は
- 「学習する対象が何か?」(対象)
- 「どのように学習するか?」(学習戦略・ストラテジー)
- 「どのような状態で学習するか?」(内的な状態)
- 「サポーターがいるかどうか?」(コーチ・トレーナーの有無)
によって大きく変わるという点です。
〈学習の5ステップ〉とショートカット
何を学ぶにもそのスキル習得を効果的に行うポイントがあります。
*より詳しい解説も随時追加&更新していきます!