メタモデルにおける比較の省略とは、会話の中で「何と比較しているのか?」という比較対象が明示されていないこと。
具体的には、「もっとできたのに」「これの方がカンタンです」などの文章にあてまはります。これらは比較基準が省略されていて「何と比較しているのか?」を提示していません。比較の省略を行うことで内容が不明瞭になります。
外部には膨大すぎる情報があるため、私たちが内的に情報処理をする際には必ず省略が行われており、これらを特定しなくても意思疎通できる場合もあります。しかしそれが重要な情報の場合、齟齬やミスコミュニケーションが生まれる原因になります。
比較の省略による情報省略の弊害と、その回避&回復方法をご紹介します。
名称 | 比較の省略 |
意味 | 何と比較しているのか?を明示しないこと |
英語 | Comparative deletion |
訳 | Comparative=比較 Deletion=省略・削除 |
メタモデル〈比較〉の省略とは
〈比較〉の概要
コミュニケーションモデルとは
〈コミュニケーションモデル〉という「私たちが世界をどう認識しているのか?」を表したモデルがあります。私たちが思考する、記憶するなどの情報処理プロセスの中で、情報を省略・歪曲・一般化する働きがあります。
メタモデルとは
私たちの情報処理プロセスにおいて、省略・歪曲・一般化は必要不可欠です。しかしこれら3つの機能が効果的に働かない場合があります。すると、私たちは行き詰まり、選択肢を失い、自らの可能性を狭めてしまいます。
私たちの内的な情報処理プロセスの過程で、不必要&不適切に情報が失われてしまう場合(パターン)が12あります。そしてそれぞれにおいて、その情報を回復させるための効果的な質問があります。これら不必要&不適切に情報が失われてしまう12パターンと、それを回復させるための質問を体系化したものをメタモデルと言います。
〈比較〉の省略とは
私たちの内的な情報処理プロセスの中で、不必要&不適切に情報が失われてしまう12パターンのうちの1つが「具体的に特定の動作や状態が省略されている」パターンです。これを〈メタモデルの比較の省略〉と呼ばれています。
私たちは会話の中で、比較級の言葉を使いながらその対象や基準を指し示さないで話すことがあります。それらはその対象や基準を省略することによって、内容が不明瞭になります。
〈比較〉の省略の例
- もっとできるはずだよ!
- ものすごくひどいことをしてしまった…
〈比較〉の省略による弊害
〈比較〉の省略によるデメリット
比較の省略が不適切に行われる(重要な情報が省かれてしまう)と、下記のような特徴が現れます。
- 思考やアクションを制限する
- 思考する時に省略がすぎると、論理が飛躍する
- 聞きたくないことを全て省略してしまうと、結果選択肢が狭まる
- 限定的な側面だけに注意が向き、他に向かない
- 情報が少なすぎると課題解決が困難になる場合がある
- 省略は体験の盲点となる
- 省略によって話の真意が不明確になる
これらが起こると情報不足が起こり、ミスコミュニケーションが発生しやすくなります。下記の〈調整方法〉を理解して活用しましょう。
〈比較〉の省略により失われた情報
- 比較の対象
- 比較の基準
が省略されています。
〈比較〉の省略を回復させる方法
- 情報を収集する
- 意味づけを明確にする
- 制限を明らかにする
- 選択肢を与える
これらを可能にするのは、自分自身、もしくは相手に〈適切な質問〉をすることです。
〈比較〉の省略を回復させる質問
- 何と比べて?
- 何を基準に?
- いつと比べて?etc…
〈比較〉の省略を回復させる質問例
- もっとできるはずだよ!→“もっと”って…何と?いつと?誰と比べて?
- ものすごくひどいことをしてしまった…→何と比べてひどかったの?