メタモデルにおける因果とは、「AがBの原因になっている」と話がされていること。
ある人の行動が、他人に一定の反応を起こ“させる”(因果関係がある)と言う前提で話されるときのことを指します。「AがBの原因だった」と言うことにより、2つの出来事を結びつけます。しかし実際にはAは、Bの「直前に起こった」という理由だけでその根拠になっている場合があります。不適切に因果を持たせた考え方や文章は、現象を歪め、話している人の可能性・選択肢を狭めるため注意が必要です。
他者が因果を元に話している場合には、「効果的な質問例」を参照ください。質問を通してその不適切な因果関係をゆるめることを可能にします。
自身が因果を元に話さないようにするためには、「効果的な話し方」を参照ください。
名称 | 因果 |
意味 | 原因と結果のこと |
英語 | Cause and Effect |
訳 | Cause=原因 Effect=結果 |
メタモデルの〈因果〉による歪曲とは?
〈因果〉の概要
コミュニケーションモデルとは
〈コミュニケーションモデル〉という「私たちが世界をどう認識しているのか?」を表したモデルがあります。私たちが思考する、記憶するなどの情報処理プロセスの中で、情報を省略・歪曲・一般化する働きがあります。
メタモデルとは
私たちの情報処理プロセスにおいて、省略・歪曲・一般化は必要不可欠です。しかしこれら3つの機能が効果的に働かない場合があります。すると、私たちは行き詰まり、選択肢を失い、自らの可能性を狭めてしまいます。
〈因果〉による歪曲とは
私たちは会話の中で、何かを原因として1つの結果が起こったというように話すことがあります。この前提は「ひとりの人間の行動が、他人の行動・感情・思考に影響を及ぼす。行動を引き起こす。」という考え方です。しかし本来、人は1つのことからの影響だけでなくさまざまな要因に原因と、結果が紐づいています。「1つの原因が1つの結果に結びつく」と強く信じているとき、因果関係があることが前提になっていて、現象を歪曲させている可能性があります。
大切なことは下記の通りです。
- 出来事に対する反応・行動・選択には、選択肢があります。
- どのように反応するか、私たちは〈自ら〉選んでいます。
- 私たちは、他人の反応・行動・選択の〈唯一の原因〉になりえることはありません。
- 同時に、ある人の行動、もしくは事象〈だけ〉が、私たち自身の反応・行動・選択の「唯一の原因」になることもありません。
〈因果〉による歪曲の2パターン
- 〈因果〉
ある人の行動(A)が、「自分/他者に反応を起こ“させた”(B)」という前提で話されている - 〈逆因果〉
自分の行動(A)が、「他者に反応を起こ“させた”(B)」という前提で話されている
〈因果〉による歪曲の例
〈因果〉
- あの出来事のせいでイライラしている。
- 彼は私を嫌な気分にさせる。
〈逆因果〉
- 私のせいで、辛い思いをさせてしまいました。
- 私が、彼を動揺させた。
〈因果〉による歪曲の弊害
〈因果〉による歪曲のデメリット
歪曲が不適切に行われると、下記のような特徴が現れます。
- 飛躍した結論を出す
- 証拠もなく動機付ける
これらが起こると、苦痛や問題が発生しやすくなります。下記の〈調整方法〉を理解して活用しましょう。
〈因果〉による歪曲で失われる情報
因果の文章で表現することで
- 出来事に対する反応・行動には選択肢がある
- 反応・行動を選ぶのは、その本人である
という前提を欠如させてしまいます。これにより「反応は自分で選ぶことができる」という可能性と、反応・行動の選択肢を自ら狭めてしまいます。つまりはその状態の解決をより困難なものにしてしまいます。
〈因果〉による歪曲を回復させる方法
- 情報を収集する
- 意味づけを明確にする
- 制限を明らかにする
- 選択肢を与える
これらを可能にするのは、自分自身、もしくは相手に〈適切な質問〉をすることです。
〈因果〉による歪曲を回復させる質問
- 具体的にはAが、どのようにBの原因になっていますか?
- Aが原因でないとしたら、これはどうならないといけなくなりますか?
- 正確には、AはどのようにBを引き起こしていますか?
- あなた自身が「Aが起こるとBという反応をする」ことを選んでいるとしたら、B以外の他の選択肢にはどんなものがありますか?
- あなたはどうして、Bのように反応することを選んでいますか?
〈因果〉による歪曲を回復させる質問例
〈因果〉
- あの出来事(A)のせいでイライラ(B)している。
→正確には、Aはどのようにあなたをイライラさせているの? - 彼(A)は私を嫌な気分(B)にさせる。
→あなたは、どうして嫌な気分でいることを選んでいるのでしょうか?
〈逆因果〉
- 私のせい(A)で、彼女に辛い思い(B)をさせてしまった。
→あなたは、具体的にどのように彼女に辛い思いをさせたの? - 私が(A)、彼を動揺させた(B)。
→あなたのやったことはやったことですが、彼は彼でその反応を選んだんですね?