コーチングは1990年代からアメリカで本格的に広まり始めた、まだ新しい業界・概念です。人間の自己実現に焦点を当てて、どのように人の成長や学びが効果的に行われるかについて実践的な現場から新しいスキル、モデル、フレームワークが開発されてきました。
そのためコーチングの流派といっても確固とした区別があるわけではなく、またそれが精査されているわけでもありません。2020年代に入って日本でもより認知度が高まり、海外だけでなく日本でもどんどん増えていっているのが現状です。ここでは導入期であるコーチングの現段階でのスタイル(流派)についてご紹介します。
コーチングの流派とは?
コーチングは新しいアプローチ方法
コーチングは1990年代からビジネスシーンで活用され始めた比較的新しい目標実現&課題解決方法です。しかし個人の成長だけでなく、組織の発展にも有効であるため、さまざまな場面でコーチングが取りいられるようになってきました。
「相手の中にあるものを”引き出していく”」というのがコーチングの基本です。この基本哲学は同じでも、目的や焦点が異なることによりさまざまなコーチングスタイルが生まれてきました。それぞれ異なるアプローチや技術を提供しており、コーチがクライアントのニーズや目標に合わせて適切なワークやサポートを選択できるようになっています。
コーチングの目的はクライアントが自分自身の可能性を最大限に引き出し、自分の能力を活用して目標を達成することの支援です。そのためにコーチは課題にあったコーチングスタイル・スキル・サポート方法を活用しながらクライアントの目的実現を伴奏します。
コーチングの流派とは?
コーチング流派は、日本の「道」文化でいう流派のようなものです。いけばなにも「古流」「小原流」「草月」と流派に分かれて発展してきました。
コーチングではどのようなアプローチ方法でも、その根底にある共通項は(傾聴と質問を通して)「その人の内にある答えや可能性・能力を引き出し変化と成長を促すこと」です。しかしコーチングの目的、扱う領域、ご自身の特性に合わせてそのスタイル/アプローチを変えた方が効果的です。
コーチングスキルの活用
コーチングを実施する際に、コーチは1つのスタイル(流派)だけを使うとは限りません。その目的、状況、相手に合わせて複数アプローチを組み合わせながら行います。より多くのモデルやスキルの引き出しがある方が、より質が高く、効果的なコーチングが可能です。
コーチング流派:主要5選
25年以上の歴史があり、始まったとされている時期が早いものから時系列でご紹介します。この他にも様々なスタイルのコーチングが存在し、日々発展しています。
⑴ NLPコーチング
NLP Coaching
NLPを基盤としたコーチング手法。NLPとは、1970年代前半に開発された「人の思考や行動を変化させるため」のツールや技術を提供する実践心理学です。NLPコーチングでは、クライアントの思考や言語パターンを観察し、認識、言語、行動の変容を促すことを目的としています。
⑵ オントロジカル・コーチング
Ontological Coaching
オントロジカルとは「存在論」という意味で、オントロジカル・コーチングは、「行動様式」ではなく「在り方」に焦点を当てたコーチングアプローチ。1970年代後半にチリの哲学者であるフェルナンド・ローレンスが理論を打ち立てました。
⑶ インテグラル・コーチング
Integral Coaching
1980年代以降にアメリカの哲学者であるケン・ウィルパーの著書から生まれた「インテグラル・モデル」の枠組みを活用したコーチング手法。インテグラルとは「完全な・包括的な・バランスの取れた・総合的な」という意味を持ち、4つの視点から〈みる〉ためのサポートを行う。コーチングはインテグラルモデル活用の1つの用途とされています。
*4つの視点=①内的 × ②外的 & ③個人的 × ④集団的
⑷ コーアクティブ・コーチング
Co-Active Coaching
1992年に創設されたCTI*が伝えるコーチングスタイル。コーアクティブ・コーチングには
- 哲学となる〈4つの礎〉
- その要となる〈5つのポイント〉
がありそれらをベースに、具体的な技法やツールが用意されている体系的なコーチングスタイルの1つです。
*CTI=The Coaches Training Institute
⑸ ポジティブ心理学コーチング
Positive Psychology Coaching
ポジティブ心理学の原則に基づいたコーチングへのアプローチ。ポジティブ心理学は、1998年に創設された「幸福のための心理学」です。それまでの心理学は心の病や障害に焦点を当てていましたが、個人や社会を繁栄・心の健康に焦点を当てるための心理学の一分野として立ち上げられました。