モデリングとは、他者の行動、スキル、考え方を観察し、それを模倣して取り入れるプロセスのこと。
名称 | モデリング |
意味 | 他人を観察し、真似すること |
英語 | Modeling |
訳 | Modeling=手本に一致させる、手本をもとに具現化する |
モデリング概要
モデルとは
本来モデルとは現実そのものではなく、現実のある一部や一面を、より実践的で具体的な方法として取り込むために作られるものです。フレームワークとも言われます。
- 現実をシンプル化させた「模型」のこと
- お手本・真似する対象としての「見本」のこと
モデリングとは
モデリングとは、他者の行動、スキル、考え方を観察し、それを模倣して取り入れるプロセスのこと。特に心理学の分野では、他者の優れた部分を観察し、それを真似することで学習を促進させることを言います。
自身のお手本となる存在や真似する対象としてのモデルの存在は、学習においてとても大切です。「ステキだな」と思うその気持ちから、その人の行動・振る舞い・ファッション・ライフスタイル・考え方…などを自然と取り込んでいた経験はありませんか?私たちが「お手本と思う存在を真似すること」をモデリングと言います。
ex.好きなアーティスト、歴史上の人物、キャラクター、尊敬する人、憧れの存在など
モデリングの特徴
モデリングは学びを加速度的に早くする
見本をそのまま真似するプロセスは、新しいことを学ぶにあたりとても効果的な方法で「加速学習」と呼ばれます。通常、学びは「学習の5ステップ」と呼ばれるよう段階的に学んでいくと考えられています。具体的には知識を身につけ、実践を繰り返し、能力へと段階的に進むという学習方法です。
しかしモデリングは「見本を真似すること」もしくはあたかも「その人であるかのように振る舞う」ことを通して「一気にできる状態を実現させる」ことも可能にします。もしくは「どのようにしてそれが実現されているか」を体感することで、学びを加速させることが可能です。
モデリングの種類
モデリングは「見本を真似る」ことで学ぶ学習方法の1つです。その対象と目的によりポイントがあります。では「誰を」モデリングするのでしょうか?その人の「何を」モデリングするのでしょうか?
- 誰をモデリングする?(who)
- 何をモデリングする?(what)
- いつをモデリングする?(when)
- 何のためにモデリングする?(why)
⑴ 誰をモデリングする?
モデリングの対象は、大きく2つ挙げられます。
- 他者(他者のモデリング)
- 自己(自分のモデリング)
他者モデリング
一般的なモデリングは、他者を見本とするものです。子どもであれば周りにいる大人、特に身近にいる両親や家族をモデリングすることで学習・成長すると言われています。思春期には憧れや好ましい存在のファッションや行動を真似した経験があるのではないでしょうか。大人になるにつれて、高いパフォーマンスや卓越性を発揮する人、成功している人、ライフスタイルに親近感があるモデルを見本とするなど、能力、信念や価値観をモデリングするなどが挙げられます。
自己モデリング
モデリングは、自分自身を見本とすることもできます。自分の卓越した状態・結果をモデリングする、成功パターンを分析して、それを再現性のある能力にする、などすでにある能力の再現性を高める、パフォーマンス自体をより高める方法に使うことができます。(セルフモデリングとも言います。)
⑵ 何をモデリングする?
モデリングの対象は、目で見えるもの(服装、持ち物、行動)だけではありません。目では見えない能力や信念・価値・セルフイメージを真似することができます。
*この5つはロジカルレベルと言われます。
環境のモデリング
- どんな環境・状況にいるか?
- ex.心地いいコミュニティに入る
行動のモデリング
- どんな行動・振る舞いをしているか?
- ex.服装、持ち物、言葉使いなどを真似する
能力のモデリング
- どんな能力を使っているか?
- 行動の戦略、思考パターン、マインドセットなど
- ex.仕事ができる先輩を観察して、卓越したマネージメント能力やリーダーシップスキルをモデリングする
- ex.友達の戦略的な思考プロセスを教えてもらい、真似してみる
- ex.初めてのスノーボードで、“上級者の滑り”を見てそれをモデリングしてやってみる
- ex.デザインのトレースをしてプロの技をモデリングする
信念・価値観のモデリング
- どんな信念・価値観を持っているか?
- 何を信じているか。何を大切にしているか。
- ex.尊敬する歴史上人物が、何を大切にしてそれをどのようにそれを行動に移していたかをモデリングする
- ex.魅力的な企業は、ビジョンをどのように事業に落とし込んでいるのかモデリングする
アイデンティティのモデリング
- どんな自己認識を持っているか?
- どんなセルフイメージを持っているか
- ex.あたかも自分が社長になったかのように振る舞う(あたかもフレーム)
下に行けば行くほど、学習による変化の度合いが大きく本質的な学びに繋がります。モデリングすることで、従来の学習プロセスよりも早く学ぶことが可能です。(このように1つ1つ知識や経験を通して学習するのではなく、真似することで一気に学習することを加速学習と言います。)
⑶ いつをモデリングする?
モデリングにおいて時制を考慮することもできます。学びの対象や影響を受けるモデルを「現在」「過去」「未来」の観点から分けて捉えることができます。
- 現在のモデル(現時点での対象者)
- 過去のモデル(歴史上の対象者や過去の成功事例)
- 未来のモデル(未来の自分や目標とする状態)
- 統合型モデル(過去・現在・未来を組み合わせる)
現在のモデル(現時点での対象者)
現在活躍している人々や、今の状況で成功しているモデルを観察し、それを自分に取り入れる方法です。このタイプのモデリングは、今の時代や環境に即した方法を学びやすいという利点があります。
例
- 現代のキャリア女性がどのように時間管理をしているか
- どのようにリモートワークやデジタルツールを活用しているかをモデリングする
特徴:
- リアルタイムの情報を活用できる
- 現代のトレンドや技術に基づくアプローチができるようになる
- 時代の変化に敏感に適応していくことがカンタンになる
過去のモデル(歴史上の対象者や過去の成功事例)
歴史的に成功した人物や過去のリーダー、成功事例をモデルとして学ぶ方法です。時代を超えた普遍的な原則や、長期的な豊さを目指すための洞察を得られる点で効果的です。
例
- 過去の人々がどのように決断し、困難に対処してきたかをモデリングする
特徴
- 長期的な視点や、普遍的な学びを得られる
- 時代や状況の違いを知りながら、応用できる部分を見つける
- 歴史的背景を深く理解することで、過去からも学ぶ姿勢を養うことができる
未来のモデル(未来の自分や目標とする状態)
未来における理想の自分や、今後のトレンドや技術革新に基づいた未来の姿をモデリングする方法です。これは、ビジョンを持ち、将来の理想像に向かって行動を整えていくプロセスです。
例
- 数年後の自分がどのようなキャリアや生活を築いているかを想像し、そのために必要なスキルや習慣を今から取り入れる。
特徴
- ビジョンや目標設定に基づく未来志向の行動
- 未知の領域に挑戦するため、クリエイティブなアプローチが求められる
- 現在の行動を未来に向けてデザインする
統合型モデル(過去・現在・未来を組み合わせる)
過去、現在、未来のモデルを統合的に取り入れる方法です。過去の教訓、現在のトレンド、そして未来へのビジョンをバランス良く組み合わせ、長期的な成功を目指します。
例
- 歴史的な成功者の教訓を学びつつ
- 現代の最新のテクノロジーやビジネスなどの知識を吸収し
- 将来の自分の理想像を描いて行動する
特徴
- 総合的でバランスの取れた学習と実践が可能になる
- 過去からの教訓と現在の状況を基に、未来を目指す計画を立てる
- 柔軟性があり、多面的な視点から自分を発展させる。
⑷ 何のためにモデリングする?
モデリングは、仕事・キャリア、お金・経済、人間関係、家族関係、パートナーシップ、自己成長、健康、余暇などさまざまな分野で、成功例やスキルを学び、自分の成長や目標達成に活かすことができます。何のためにモデリングをしたいか?目的を明確にして取り組むことでより結果を得やすくなります。
- 仕事・キャリア(ex.営業スキル、思考スキル)
- お金・経済
- 人間関係(ex.リーダーシップスキル)
- 家族関係
- パートナーシップ(ex.コミュニケーションスキル)
- 自己成長
- 健康(ex.健康維持・促進、病気の回復)
- 余暇
モデリングの歴史
1960年代に、心理学者のアルバート・バンデューラが「人は他者の言動を観察することによっても学習する」ということを提唱しました。(社会的学習理論/モデリングによる学習:ボボ人形実験)。
それ以前は学習は「本人が直接体験していることから学ぶもの」と思われていましたがこの理論の提唱によってそれまでの考え方が大きく変わりました。
1970年代に、特定の人々の成功パターンをモデリングし、それを他の人が再現可能な形にする方法論としてNLPが発展。NLPでは卓越した人々の「行動」だけでなく「思考」「五感」「言語」を研究し「なぜ成功するのか(why)」を分析する一連のプロセスをモデリングというようになりました。
関連
関連ワーク
- モデリングエクササイズ
- 行動モデリング
- 能力モデリング(ストラテジー・戦略モデリング・TOTEモデル)
- 信念・価値観モデリング
- アイデンティティ・モデリング
- 自己モデリング
- あたかもフレーム(as if フレーム)
- タグリスト(人物編)
- マッピング・アクロス(モデリングは、成功観察とマッピングのプロセス)
関連キーワード
- ストラテジー(その人の認知プロセス/戦略のマッピング)
- 学習の5ステップ(⇄加速学習/モデリング)
- 加速学習(⇄学習の5ステップ)
- ロジカルレベル
- あたかもフレーム
- 表象システム(人の戦略を分解して理解する)
- サブモダリティ(人の戦略を分解して理解する)
関連インフォメーション
- 令嬢アンナの真実(Netflix)
- ボボ人形実験
- Albert Bandura(アルバート・バンデユーラ)